トラブル対応は後先を考えて

弊所の顧問弁護士としての対応ケースをご紹介します。顧問契約のご参考になれば幸いです(守秘義務の関係上、一部事案を改変しています)。

当事務所が顧問弁護士としてご支援する介護老人保健施設において発生したトラブル対処事例をご紹介します。

通勤中の自転車による接触事故

施設に勤務する職員のAさんが、勤務時間中、自身の自転車で歩行者と接触事故を起こしました。

その日Aさんは、地域の事業所連絡会の会合に行くところでした。自転車に乗ろうとして前輪を旋回させた瞬間に、後方にいた歩行者に気づかず接触したそうです。

接触した相手は歩道を歩いていた女性でしたが、妊娠されていました。

接触した相手の方は転倒し、尻もちをつきました。身に着けていた衣服が少し傷ついたものの、体には別状ないとのことで、特段警察を呼ぶことなく収めたいと言われたそうです。

ともかくもAさんは相手の方に連絡先を渡し、先方も行ってしまったので、施設にことの顛末を報告しその場を離れました。

施設の事務局長は報告を受け、先方がそれほど問題視していないということで楽観的になり、後日、衣服の弁償費用と通院した際の通院費と交通費計1万円を支払いました。

通勤中の自転車による接触事故

その後、当事務所に「本件はこれで一応解決しましたが、何か他にすべきことはありますか?」というご相談がありました。

結論としては、これは非常に問題があるといえます。もし先方が、後日「あのときの衝撃で流産してしまった」といった主張・請求がきたらどうなるでしょうか。請求額が大きければ、こちらも「うちの責任とは限らない」などと反論し、深刻なトラブルになる可能性があります。

相手がどのような人であるかは関係なく、事故トラブルは一つ一つ明確に線引きをして確実に解決していく意識が重要です。

当事務所は、「何でも支払いをするときは、どのような名目で、何に対する支払いかを明記し、その支払いで全て終わらせ今後は請求しないという確約を得る必要があります」と助言し、このようなときに取り交わす示談書(合意書)の雛形をメールで送りました。数々のトラブル事例に接し、最悪の事態を知る弁護士だからこそできるアドバイスです。

加えてコンプライアンス上、また後にこの問題が蒸し返される場合に備える観点からも、今からでも警察へ届け出ることを勧めました。施設側が届け出たところ、警察からは「自転車に乗る前の旋回中のことなので、接触事故とはならない。しかし、当事者同士で話し合い文書を作成し、合意のうえで文書を刑事課へ持参すれば記録は残せる」という助言をいただきました。そこで改めて関係者間で協議し、お互いが納得した上で文書を作成し署名を取り交わしました。

今回のような事故については、小さな事故ではありがちですが、その場で当事者同士で話し合い簡略に済ませてしまうことは危険な方法です。特に転倒等の事故であれば、人間の身体は時間をおいてダメージが出てくるためその都度請求するということになりかねません。

道交法に基づきすぐに警察へ通報し、警察による調査をしなくてはいけません。そのうえで解決策を検討しますが、示談金を支払うにしても「債権債務なし条項」を入れた合意書に署名しないと、後でトラブルが再発する可能性がありうるのです。

今回は当事務所にメール連絡があった時点で、当事務所から「債権債務なし条項」を入れた合意書のテンプレートを送付しておりました。それを活用し、すぐに合意書作成ができました。

後日、事務局長からは「先に先生に相談すべきでした。雛形を頂き有難う御座いました。他にもミスがあるかもしれません。引き続き宜しくお願い致します。」との感謝のご返信を頂きました。

小さな事故でも気を抜かない

自転車と歩行者の接触は、自動車の接触事故等と比較すると軽微に思われるかもしれません。しかし、被害が発生している時点で大きな問題となる可能性を秘めています。小さな怪我でも大問題へ発展することもあるため、まずは相手の状況確認と警察への通報、場合によっては救急車の手配をしましょう。

事故発生時の鉄則

また、その場では決して解決を急ごうとせず、連絡先を交換してください。個々に口頭で示談をしてしまうと、余計にトラブルが発生してしまうため、お気を付けください。

今回のようなご相談を受けたとき、弁護士によっては「なぜそのような対応をしたのですか」等と顧問先の対応を責める人もいるかもしれません。弁護士にとって「示談書を交わさず支払ってしまうことはあり得ない」ことだからです。

しかし、弁護士にとっては常識でも、一般の人は事故の経験などそうそうなく、ましてや事故後の対応のポイントなど分かりませんから、仕方のないことです。そのようなときは起きたことを前提として、都度リカバリ―の方法をお伝えしています。

このように当事務所は徹底して事業所や現場の感覚に寄り添い、都度ベストな対応策をご案内することに努めております。その方法はメールを問わず、電話、テレビ電話形式等、様々なコミュニケーションの取り方に対応しています。

当サイトには顧問弁護士に関するご紹介ページもございます。顧問契約を真剣にご検討頂いている方には20分無料のオンライン面談もご提供しておりますので、お気軽にお問合せください。