カスハラ入居者をすぐに退去させられず困った施設から得る教訓

弊所の顧問弁護士としての対応ケースをご紹介します。顧問契約のご参考になれば幸いです(守秘義務の関係上、一部事案を改変しています)。

当事務所は介護・福祉分野のトラブル予防、トラブル対応に特化しております。日々、様々な事案に対応しますが、今回ご紹介するのは「サ高住の入居者からのカスハラ対応」についてです。

人それぞれ個性があり、その個性が十人十色であるからこそ人間関係に面白みが出てきますが、当然ながら人には短所や人間同士相性の問題もあり、関係性がうまく作れない場合も多々あります。

特にサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)は介護分野においても比較的新しい形態であるため、利用者側の理解もまちまちであり、付いている「サービス」に過大な期待を抱いてしまい、「何でも無制限にしてくれる」と誤解する人も少なくありません。

そのようなご入居者に対しては、施設としても粘り強く対話や説明をすることでご理解頂くことが期待できますが、相手の思いが強く一方的に命令されてしまうなど、うまくいかない場面も発生してしまいます。特に、サ高住は元々軽度の高齢者が自立した生活を営む場という位置づけで始まったので、様々な身体状況や医療依存度、背景事情を持つ方が集まられ対応が一筋縄ではいかない…ということもあるのでしょう。

今回は、当事務所の顧問先である、あるサービス付き高齢者向け住宅で発生したカスハラ対応に関するご相談と当事務所の対応についてご紹介します。

カスハラ入居者をすぐに退去させられず困った施設から得る教訓

当事務所の顧問先のサ高住の責任者からメールでご相談をいただいた事例です。

この施設の入居者(60代男性、要介護度3)による典型的なカスハラによって、多くの職員が悩まされているという事態が起こっていました。緊急時でもないのに連日夜間コールを何回も使って呼び出しをしたり、夜間コールに対応する職員の対応のが遅いと暴言とともに指摘を繰り返したり、職員の人格を否定するような数々の暴言を吐かれたりという状態でした。

また、この入居者は施設が併設運営する訪問介護サービスも利用していましたが、ヘルパーにも同様に高度過ぎる要求や恫喝、暴言をぶつけていました。

職員のモチベーションも下がり、退職しかねない職員も現れたことから、責任者は早急の対処を求められました。「いっそのこと退去して頂ければ…」と、藁にもすがるような思いで入居契約書を確認したところ、なんと施設からの解除条項の中に「入居者が、他入居者や職員に対する迷惑行為があった場合」という項目が記載されていませんでした。責任者はどうすれば良いか分からなくなり、当事務所へご相談の連絡がメールで届きました。

ひどいカスハラでモチベーションが下がりきる職員

当事務所は、まずは入居契約書を確認し、「他入居者や職員に対する迷惑行為があった場合の契約解除」に関する記載が無いことを確認しました。記載が無いということは、このような事態になった場合に退去させることができないことを意味します。労働トラブルをご紹介した別コラムでも書きましたが、就業規則や契約書など、現場のルールとなる規程集は各法人の責任のもと作成するものですから、種々のトラブルを想定ししっかり作り込む必要があるのです。

正直、「これでは正規ルートの解除は難しい。困ったな」と感じました。

ところで、なぜこの施設は「他入居者や職員に対する迷惑行為があった場合の契約解除」に関する表記が無かったかというと、この施設を運営していた事業所時代の入居契約書を使っており、その中に当該記載が無かったからです。このカスハラ入居者は前身の事業所時代に入居した方だったので、古い契約書のまま今に至っているとのことでした。

契約期間満了までまだ日がありましたが、施設としては出来る限り早く退去していただきたいと望んでいました。

契約解除の記載が契約書になかった

入居契約の期間は残り数か月で満了するとされていました。しかし、通常の賃貸借契約同様、期間が切れたからといって無条件で退去して頂くことは不可能です。特にサ高住は借地借家法が適用されるため、正当事由が認められない限り退去頂くことはできません。

そこで、当事務所はともかくもそのご入居者と話し合いを行うことをご案しました。

結果的には、施設と入居者およびそのご家族で話し合いを行い、責任者がはっきりと「もうこれ以上はサービス提供できない」という旨を伝えたところ、施設側の強い意志を感じたご家族が退去に同意してくださいました。

今回の場合は、話し合いを行ったことで思いのほかすんなりと退去に応じていただけましたが、話し合いがもつれ長期戦になるリスクもはらんでいました。運が良かった事例であり結果オーライですが、やはり契約書の内容はしっかりと確認して、必要な項目を記載したり、不要な項目を削除する対応をしておかなければいけません。特に今回のように事業所の運営団体が変更になった場合は要注意です。また、発生したトラブルを教訓にして、必要であれば契約書の内容を変更することも大切です。これが今回のトラブル事例から得られる教訓といえるでしょう。

契約書に書かれていることがルール

さて、今回のトラブル事例の対処法は、話し合いしか無いと申し上げましたが、実はもう1つ対応方法はありました。「入居者と話し合いを行ったが、どうしても理解してくれず粘られている」という状況になってしまった場合に仕方なく切るカードというものを、法律のプロとして実は当事務所は用意していました。

しかしながら、このカードはやや特殊であり、言ってしまえばアンフェアな手法であり、また安易に使ってしまうことで入居者側にも施設側にもインパクトの大きい手法でしたので、今回はまずは話し合いから進めることでアドバイスしました。

そういった理由もあり、この特殊な手法を本記事で公開するのは控えさせていただきますが、どうしても知りたいサ高住を運営する事業所関係者の方がいらっしゃいましたら当事務所までご連絡ください。特別にお教えします(顧問先様は無料)。

特に本記事でご紹介したようなトラブルに直面しているサ高住を運営する事業所の場合で、入居者に粘られ退去させるまでに苦戦を強いられている場合であればお役に立てると思います。

当事務所は介護福祉分野に特化した弁護士法人ですので、事態を見極め適切なサポートをご提供することが可能です。目の前のトラブル対応だけでなく、トラブルを学びにして今後困らないように対策を講じるところまでアドバイスすることも重要視して取り組んでいます。これまで100を超える事業所が顧問先にあり、実績も豊富にございます。

当サイトには顧問弁護士に関するご紹介ページもございますので、ぜひご覧ください。まだ顧問弁護士契約をされていない方で顧問契約を真剣にご検討頂いている方には20分無料のオンライン面談もご提供しておりますので、お気軽にお問合せください。

また、本コラムはミニコラムとして、短い文章で事例をご紹介しております。もちろん守秘義務の関係で内容は改変しておりますが、お伝えしたいポイントはしっかりお伝えしております。

 

当事務所ではミニコラム以外にもコラムを発信しております。こちらでは出来るだけ詳しく介護福祉において重要なテーマについての分かりやすい解説、対策法、考え方、事例などをお伝えしています。以下よりお進み頂きぜひご確認ください。