弊所の顧問弁護士としての対応ケースをご紹介します。顧問契約のご参考になれば幸いです(守秘義務の関係上、一部事案を改変しています)。
当事務所は介護・福祉分野のトラブル予防、トラブル対応に特化しております。身体拘束や虐待は、介護施設においては重要テーマでありますが、「これは虐待なの?」という絶妙なグレーゾーンに関するご質問、ご相談をいただくことがよくあります。
当事務所の顧問先様であれば、現場で迷った時、不安を抱えた時、トラブルの予感がした時にすぐに気軽にご連絡いただけますので、様々なご相談事例の知見があります。
どうしても現場で判断がつかないところで、尚且つ法令に違反すると不味いようなご相談は、当事務所の出番です。気兼ねせずどしどしご相談ください!
今回は、ある事業所様からご相談いただいた「これは大丈夫?」という事例を挙げ、その考え方を解説します。
ナースコールに似せたものを並べる
ベッド脇のナースコールが気になり、頻繁に触って鳴らしてしまうご利用者がいらっしゃいました。特に用事も無いのに何度も鳴らされることで、本当に対応が必要な方にリソースを割けなくなると感じていた事業者側では検討を開始しました。
そのご利用者の状態を振り返ってみると、手遊びの一環で近くにあるナースコールを触っているようだと考えられました。手持ち無沙汰、何かを触っていないと落ち着かない、そのようなご利用者であると判断した事業所は、ナースコールの隣にタオルやおもちゃなど様々なものを置いて試してみましたが、どれもうまくいきませんでした。そこで「ナースコールに似せたもの」を作ってはどうか、という意見が出たそうです。
サランラップの芯を色紙で巻き、底の方にボタンを取り付け押せるようにしました。目立つことで手に取るようになるだろうと考え、飾りつけもして実物とは全く異なる外観になりました。
「これをコールの隣に置いて、代わりに押して頂こう」という話になったのですが、「こうすることでコールを押させないことになるが、ネグレクトに該当しないでしょうか?」という意見が出て不安になったそうです。そこで、当事務所へご相談がありました。
ご利用者のことを想っての行動だからネグレクトと断定しづらい
ご相談当初は、「ナースコールを頻回に押すので業務が滞っている」「コールの代替物を置けば解決できるのではないか」と言う情報しかありませんでした。そこで詳しく事情を伺ったところ、「ナースコールを隠して、ナースコールに似せたものを置くのではなく、ナースコールの横に似せたものを置く」という方法や、「飾り付ければ目につくし、手遊びをしたいご利用者の気持ちを満たすのではないか」という意図を聞き取ることができました。
それを聞いて、「これはネグレクトではない」と安心できました。
法律ではネグレクトについて、「高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること」と定義されています。
もし、ナースコールを隠して似せたものを設置すればコールを没収することになりますから該当すると言わざるを得ません。しかし、コールは隠さずその横に似せたものを設置し、しかも明らかにナースコールとは異なる飾りつけをしているため、ナースコールと誤認させる意図があるとは思えないものでした。
もしかしたら「不適切な対応」という評価をされるかもしれませんが、ネグレクトとは認定されないでしょう。ただ、実際に置いてみてご利用者が興味を示さない等、あまり効果がないと思われたときは邪魔になるので取りやめるべきとアドバイスしました。
表層的に事態を見れば、本件もネグレクトと思われるかもしれません。しかし注意深く話を深堀りすることで、その背後にある意図、理由を探ることで真相が明らかになります。ご利用者の状況、性質を考慮したうえで、高い満足度を維持しながら対策をしようとしていたのであれば問題ないといえることが多いのです。ご相談者の方には、安心して頂けました。
当事務所は、介護福祉分野に特化した弁護士法人として全国の150を超える顧問先をご支援しております。トラブルでなくとも「これは大丈夫?」「こういう場合はどうしたら良い?」といった質問、確認、相談事でも承っております。自分たちでの判断が難しい場合、特に間違った解釈をしてしまうことによって法律違反にはる場合などは、専門家である弁護士の見解を活用するという策があります。
出来るだけ細やかに対応できるよう、当事務所では顧問弁護士プランをご用意しております。
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