弊所の顧問弁護士としての対応ケースをご紹介します。顧問契約のご参考になれば幸いです(守秘義務の関係上、一部事案を改変しています)。
当事務所は介護・福祉分野のトラブル予防、トラブル対応に特化しております。身体拘束や虐待は、介護施設においては重要テーマでありますが、意外と間違った認識のまま日々の業務を行っている方もいらっしゃいます。身体拘束や虐待に関しては「知らなかった」、「勘違いしていた」という言い訳は通じず、決められたルールに従って罰則もあるため、従事する職員の方はぜひとも正しい理解をしていただきたいところです。
身体拘束や虐待に関する正しい知識については、当事務所が発信しているコラムで解説しておりますので、ぜひご覧いただければと思います。※コラムのリンク先は本コラムの最後にご案内しております。
さて、今回は「身体拘束に関する間違った認識」の一例を挙げ、それについて解説します。
「家族の同意があれば身体拘束が許される」とは限らない
「うちの施設でこんな事実があったのですが、大丈夫でしょうか?」
とある施設の責任者からご相談のご連絡をいただきました。施設内の聞き取り調査で、ある職員が行った身体拘束に関して「ご家族の了解を得たので実施した」という事実が判明したそうです。
身体拘束は一歩間違うと虐待認定される重大なテーマなので、責任者の方は「これは適切なのか?」という疑問を持ったそうです。
調査書類を拝見すると「ご利用者が夜間徘徊をして、他の居室に入り込んでしまうので困っている。そこで夜間に限り、自分の意思で出ることが出来ない部屋に入れることとし、ご家族にも同意書にサイン頂いた」という記述がありました。
このご相談をいただいた当事務所はすぐに「これは不適切な身体拘束に該当するでしょう」とお伝えしました。
「身体拘束の三要件を満たしているか」で検討するべし
調査書類の内容からは「家族が了承したので、自分の意思で出ることが出来ない部屋に入れても問題が無いと判断した」ということが分かります。
実はこれは適切ではありません。身体拘束は、虐待とは異なり該当する法律がありませんので定義自体が曖昧ですが、介護保険法の運営基準では、身体拘束は「緊急やむを得ない場合を除き」とされています。そして「身体拘束0への手引き」では「切迫性」「一時性」「非代替性」の3つを全て満たしているときのみ例外的に許されるとされています。
ここで重要な点は、「利用者本人や家族の同意」は要件に入っていない、という点です。
もし関係者の同意さえあれば良いとしたのであれば、実質的に無条件で許されることなり、安易な身体拘束が横行し利用者の人権を守れないでしょう。
ですので、今回のように「ご家族の同意を得た」というだけでは適切な身体拘束とは言えないのです。どれだけご家族が了承していても、仮にご家族から懇願されたとしても、「切迫性」「一時性」「非代替性」の3つを全て満たしていなければ、その身体拘束は不適切になるのです。
勿論、何事もご家族や関係者から許可を取ることは重要ですが、それは飽くまでトラブル予防の観点から丁寧に手続きを行うという意味合いでしかありません。「あらゆる拘束の免罪符」ではありませんので注意しましょう。
無論、この判断は施設ごとに判断せねばならないため判断が難しくなっています。曖昧なところが非常に多い重要なテーマですので、判断を迷ったり、不安を感じた場合はいつでもお気軽に当事務所にご相談ください。
当事務所は、介護福祉分野に特化した弁護士法人として全国の150を超える顧問先をご支援しております。トラブルでなくとも「これは大丈夫?」「こういう場合はどうしたら良い?」といった質問、確認、相談事でも承っております。出来るだけ細やかに対応できるよう、当事務所では顧問弁護士プランをご用意しております。
顧問弁護士に関するご紹介ページもございますので、ぜひご覧ください。まだ顧問弁護士契約をされていない方で顧問契約を真剣にご検討頂いている方には20分無料のオンライン面談もご提供しておりますので、お気軽にお問合せください。
また、本コラムはミニコラムとして、短い文章で事例をご紹介しております。もちろん守秘義務の関係で内容は改変しておりますが、お伝えしたいポイントはしっかりお伝えしております。
当事務所ではミニコラム以外にもコラムを発信しております。こちらでは出来るだけ詳しく介護福祉において重要なテーマについての分かりやすい解説、対策法、考え方、事例などをお伝えしています。以下よりお進み頂きぜひご確認ください。