弊所の顧問弁護士としての対応ケースをご紹介します。顧問契約のご参考になれば幸いです(守秘義務の関係上、一部事案を改変しています)。
当事務所は介護・福祉分野のトラブル予防、トラブル対応に特化しており、日頃、顧問先様から様々なご相談をいただきます。
業務の中で不安や疑問を抱いたので解消したいという方もいらっしゃれば、施設をより良い環境にしようと積極的に行動する方もいらっしゃいます。
虐待予防の観点から、現場職員向けに日々の現場の状況についてアンケートを実施された方がおりました。それはとても良いことですが、実はアンケートの取り方、質問の設定方法についてもポイントがあります。今回は法律論から外れますが、施設をより良い環境にするために当事務所としてアドバイスを差し上げた事例をご紹介します。
自主申告制のアンケート
とある施設で、介護の仕方に関して問題が無いかアンケートが行われました。現場で日々行われているケアや起きていることは、なかなか本部からは把握しづらいため、万が一でも虐待や違法な身体拘束が無いか等、見落としている問題が無いか感知するためアンケートは有効なのです。
この施設では、職員に対し「ご利用者に体罰をしたり、行動を抑制したことがあるか」「ご利用者を差別したり、不適切な発言をしたことがあるか」といった項目について様々な質問を投げかけました。すると意外にもいくつかの項目に関して「ある」と回答した職員が複数あり、当事務所へ「こういう結果が出たが、実際にどの程度問題といえるだろうか。これを受けて、今後どのような対応をするべきか」というご連絡をいただいたのです。
事実を知るには他者申告制のアンケートを
アンケート結果を拝見すると、「ある利用者が別の利用者を叩いたので、思わず「叩いてはいけない」といい腕を掴んでしまった」「ご利用者が歌っていた自作の歌を、他の職員に「今日はこんな歌を歌っていた」と伝えるために真似をして歌ったことがあった」といったものでした。程度問題ではありますが、概ね事実として認められるのであればいずれも虐待とまでは評価されないものです。
その点はご安心頂けましたが、そもそもアンケートの質問形式に改善点があると思われました。
このアンケートは「あなたは、何か問題となる行動をしましたか」と問うだけで、「他職員が問題となりそうな行動をしているところを見聞きしたことはありますか」という質問が抜けていたのです。
自主申告制であれば、飽くまで主観に基づき回答するため事実を掴み切れない可能性が高いといえます。ちょっとだけキツイ言い方をしたのを「暴言を吐いてしまった」と思う人もいれば「そうではない」と思う人もいるでしょう。
一方で、第三者の立場から見聞きしたことを挙げてもらうと、客観的な情報を得ることができます。「ご利用者への体罰をしている職員を見たことがあるか」「ご利用者へ差別をしている職員を見たことがあるか」という質問をすると、隠れた事実が出てきやすくなります。そのような現場を目にしてしまったけれど、報告するのを躊躇ってしまったという人もいるかもしれません。
この施設は「他職員の問題行動を指摘するようなことをさせると、疑心暗鬼になり、現場の和が乱れるのではないか」と懸念されたのかもしれません。ですが、職員の関係にばかり配慮していては、肝心のご利用者の権利利益を守るという目的が達成できないのです。
虐待予防の必要性を普段から周知し、アンケートは完全匿名制とする、或いは回答方式を「見たことがある」とだけ書けば済むようにする等、正確な情報を得るためのコツが存在します。
アンケートを作成されましたら、実施前に一度当事務所にご相談してみてください。「こうするともっと良くなりますよ」というアドバイスを差し上げられるかもしれません。
当事務所は、介護福祉分野に特化した弁護士法人として全国の150を超える顧問先をご支援しております。今回のアンケートの取り方のように、法律以外のことでも対応可能な点は当事務所の大きな強みです。
他法人で実施されたケースなど知見を多く有しており、現場での細かなオペレーションに関しても様々な経験値がございます。
日々の細かな業務の積み重ねで介護サービスが成り立っていますので、業務ひとつひとつを丁寧に見ていくことは大事であると考えております。出来るだけ細やかに対応できるよう、当事務所では顧問弁護士プランをご用意しております。
顧問弁護士に関するご紹介ページもございますので、ぜひご覧ください。まだ顧問弁護士契約をされていない方で顧問契約を真剣にご検討頂いている方には20分無料のオンライン面談もご提供しておりますので、お気軽にお問合せください。
また、本コラムはミニコラムとして、短い文章で事例をご紹介しております。もちろん守秘義務の関係で内容は改変しておりますが、お伝えしたいポイントはしっかりお伝えしております。
当事務所ではミニコラム以外にもコラムを発信しております。こちらでは出来るだけ詳しく介護福祉において重要なテーマについての分かりやすい解説、対策法、考え方、事例などをお伝えしています。以下よりお進み頂きぜひご確認ください。