入り組んだトラブルほど弁護士の出番

弊所の顧問弁護士としての対応ケースをご紹介します。顧問契約のご参考になれば幸いです(守秘義務の関係上、一部事案を改変しています)。

当事務所は介護・福祉分野のトラブル予防、トラブル対応に特化しており、日頃、顧問先様から様々なご相談をいただきます。

介護福祉に特化した弁護士法人として15年以上続けてきて思うのは、本当に介護福祉には様々なトラブルが起こるということです。ご利用者の転倒、誤嚥事故、体調急変にまつわるトラブル、虐待や身体拘束、カスハラ、パワハラ、問題職員の指導から労働紛争へこじれる等…。残業代未払いや利用料の未払い等のお金関連、ご利用者の家庭の相続問題に巻き込まれることもあります。身体の安全や健康に影響を与えたとなれば医療も絡んできますし、虐待や身体拘束は行政が厳しく監督しており行政対応もこなさなければなりません。施設、職員、ご利用者、ご家族、役員や社会福祉法人でいえば評議員に第三者委員等々関係者も多いため、トラブルが起これば非常に入り組んだものになってしまうこともあります。そうなる前にご相談頂けるのが一番なのですが、こじれた場合こそ、冷静な第三者として、法律と調整業務に長けた弁護士の出番となります。

今回は、そのように入り組んでしまったトラブルの解決事例をご紹介します。

転倒事故とカスハラ

とある訪問介護事業所で、ご利用者とヘルパーさんが外を歩いていた時のことです。信号待ちをしていた時にご利用者が不意に転倒してしまいました。ご利用者はすぐ病院へ搬送されましたが、右大腿骨骨折の大怪我をしてしまいました。

事業所はすぐご家族に連絡し、謝罪した上で事情を説明しました。

数日後、事業所内でご家族と話し合いが行われ、その席でご家族は「この入院で発生する諸経費だけ負担してくれればいい」と言われました。それを受けて事業所としては然るべく対応したのですが、加入していた保険会社の対応が遅く、ご家族を待たせる結果となってしまいました。

数か月後、ご家族がしびれを切らして怒鳴り込んできました。

「先日の転倒の件、何も話は進んでいないではないか!連絡のひとつも寄こしやしないと思ったら、説明なしに紙切れ一枚送ってくるとは何事だ!人の親を怪我させておいて放置するのか、それでもプロなのか!そもそもなぜヘルパーがついていながら転倒させたのだ!怠慢ではないか!治療費を早く出せ!」

と激しい口調で指摘してきました。

事業所としては誠意を尽くしていたつもりでしたのでショックを受けましたが、「こちらに怠慢は無い。保険会社に連絡をして返答を待っている状態だ。それに本件事故は不意にご利用者が転倒されたので、予見できなかった。百歩譲って怪我のことを指摘するのは理解できるが、そんなに激しい口調で指摘するのはもはやカスタマーハラスメントではないか」ということで、逆にカスハラで訴えたいとまで考えました。

ご家族は「転倒による怪我の治療費と慰謝料の請求」をし、事業所側は「激しい口調での指摘がカスハラに当たる」ということで、完全な膠着状態に陥っていました。

そこで、事業所側から相談を受けた当事務所が本件に介入することとなりました。

本当の問題は別のところにあった

相談を受けた当事務所は、まず事態を把握するために事業所の責任者の方からヒアリングをしました。

冷静に聞き取りをすると、ご家族が怒りを感じているポイントは「なぜ事故から数十日も経ったのに連絡が一つも無いのか」ということでした。事業所側が誠意を持って対応するのか不安に感じているのだと考えました。それ故に激しい口調になったのでしょう。

対して事業所側は「誠実に対応しようと動いているが保険会社からの返信が無いので何も動けない」ということでした。つまり、保険会社の対応が課題だったのです。

そこで、当事務所は保険会社の代理店に連絡をとり、現状の審査状況を尋ねました。そうすると、保険会社の担当者が全く対応していなかったのです。事業所が依頼していた保険代理店までは話が通っていましたが、本社側での審査が止まっていました。

そこで、円滑に審査が行われるよう当事務所が間に入り手続きを促し、ようやく物事が前に進みだしました。また、事業所からの話を伺う限りでは、ご家族側は確かに激しい口調や態度をとってはいたものの、請求額はそれほど過大なものとは思われず、真性のモンスタークレーマー等ではないのではないか、と推測しました。そこで、弁護士としてご家族に連絡をとり実際にご自宅まで伺ってお会いし、対面でこれまでの経緯や今後の進め方につき丁寧にご説明したところ、理解を得ることができました。

最終的に、スピード決済で適切な金額が支払われるようになりました。

本来はあってはならないことですが、保険会社が適切に動いてくれないということが実は結構あります。代理店側で適切に対応しないこともあれば、本社側が適切に認識していない場合もあります。どれだけ事業所側が誠実に対応しようとしても、保険会社が動いてくれなければ高額な治療費や慰謝料をすぐに支払うことはできません。本件でも、もし当事務所が介入しなければ誰も話を進めることなく、ご家族との関係性は悪化の一途をたどり、最悪提訴されてしまう、ということも考えられました。この流れは、実際に利用者側からご相談を受けるときによく見られるパターンでもあります。

事業所とご利用者(ご家族)の関係性のトラブルかとおもいきや、本当の問題は別にあるというのもよくある話です。こういう場合は弁護士が事情を整理しながら適切に進めるのが得策かと思います。

当事務所は、介護福祉分野に特化した弁護士法人として全国の150を超える顧問先をご支援しており、様々なトラブル対応の実績がございます。出来るだけ細やかに対応できるよう、当事務所では顧問弁護士プランをご用意しております。顧問弁護士に関するご紹介ページもございますので、ぜひご覧ください。まだ顧問弁護士契約をされていない方で顧問契約を真剣にご検討頂いている方には20分無料のオンライン面談もご提供しておりますので、お気軽にお問合せください。

また、本コラムはミニコラムとして、短い文章で事例をご紹介しております。もちろん守秘義務の関係で内容は改変しておりますが、お伝えしたいポイントはしっかりお伝えしております。

 

当事務所ではミニコラム以外にもコラムを発信しております。こちらでは出来るだけ詳しく介護福祉において重要なテーマについての分かりやすい解説、対策法、考え方、事例などをお伝えしています。以下よりお進み頂きぜひご確認ください。