弊所の顧問弁護士としての対応ケースをご紹介します。顧問契約のご参考になれば幸いです(守秘義務の関係上、一部事案を改変しています)。
当事務所は介護・福祉分野のトラブル予防・対応に特化しており、日頃顧問先様から様々なご相談をいただきます。
弁護士はトラブル対応のイメージが強いかと思いますが、トラブルが起きないように、また、トラブルが大きくならないようご支援することもできます。顧問先様の中にはトラブルへ対応に積極的に取り組んでいる方もいらっしゃり、「こういう対応策を考えたが問題無いだろうか?」というご相談も頂戴します。特に近年問題化しているカスハラに対しては、大切な戦力である職員を守るべく、対応策を考える事業所も出てきました。しかし、逆にそれがトラブルの原因になったら元も子もありません。
そこで、今回はカスハラの再発防止策として考案された策に関するご相談事例をご紹介します。
「名前は覚えたからな!」…名札を外してよい?
ある医療法人の運営するクリニックの事例です。そのクリニックでは、受付窓口において患者からの悪質なカスハラに悩まされていました。
その高齢男性は、診察まで待たされたことにイライラしたのか「早く会計しろよ!とろい女だな!名前は何だ?」と言い募り、ぐいっとカウンターから乗り出し女性スタッフの名札を確認し「お前の名前は覚えたからな!クチコミに悪評を書いてやる!」と言い放ったそうです。
かなり酷い言動ですが、傷つき委縮する職員を見て、院長はすぐ「名札を外して名前を知られないようにする」という策を考えました。
しかし、それまでどの職種の職員も名札を付けていたため、いきなり外すのは支障があるのではないかと感じ、当事務所へご相談されました。名札を外す行動をとることで余計にトラブルが大きくなることを恐れてのご相談でした。
職務によって名前を隠すのが不適切な場合がある
今回のご相談に対しての当事務所の回答は「職務によっては名前を伏せることは問題無い」というものです。逆に言えば、人によっては名前を隠すことができない場合もあるということです。以下個別に解説します。
受付窓口の職員:
受付業務はITや自動支払機などを活用し自動化されているものも多く、また、会計や保険関係の一連の医療事務はどの職員が業務を行っても基本的に同じです。この場合は担当職員を予め明記したり記録する必要もありません。従って、名札を外して名前を伏せたとしても、患者に不利益が生じることはなく問題はありません。
医師、看護師:
医療行為を行うため、ちょっとしたミスでも健康や生命に大きな影響を及ぼす可能性があります。そのようなとき、誰がミスをしたのか追跡できなければ患者の権利利益を守れない場合があります。
その意味で、担当医や看護師の名前を隠すことは患者にとって不利益となり得るため、完全に名前を隠すことはできないと考えるべきでしょう。医療現場において患者に名札を見せないというのは不安を徒に高じさせ、信頼関係を構築できなくなる可能性があります。不安になった患者は医師等の氏名を尋ね、メモ等に記録し「なぜ名札をしないのか」と尋ねることでしょう。これが事務職員であれば「事務員はお名前を出さない方針です」と言えば理解を得やすいですが、流石に担当医の氏名も明かさないというのは知られてしまうという意味では同じことなので控えるべきでしょう。
トラブル回避策は適切に行わないと余計なトラブルに
トラブルが発生し被害に遭うことを回避するために回避策、対応策を検討しますが、適切に実施しないと、余計なトラブルを招く危険性があります。トラブル被害を避けるためであれば、何をしても良いというわけではありません。
今回のご相談内容は容易に「名札を外して名前を隠すくらい問題無いだろう」と判断できそうな事柄でしたが、しかし、丁寧に検討すると案外そうでもないということが見えてきました。
このように見えていなかったリスク、考え方を提示できるのが顧問弁護士の強みです。今回は簡単なご相談内容に思えますが、「念のため顧問弁護士の確認しておこう」「万が一もあるから、顧問弁護士の意見を聞いてみよう」という気軽な気持ちで相談いただけるのが、顧問弁護士のメリットです。
早計な判断で余計なトラブルを招かないために顧問弁護士を安全弁として活用していただければと思っています。
当事務所は、介護福祉分野に特化した弁護士法人として全国の150を超える顧問先をご支援しており、様々なトラブル対応の実績がございます。出来るだけ細やかに対応できるよう、当事務所では顧問弁護士プランをご用意しております。顧問弁護士に関するご紹介ページもございますので、ぜひご覧ください。まだ顧問弁護士契約をされていない方で顧問契約を真剣にご検討頂いている方には20分無料のオンライン面談もご提供しておりますので、お気軽にお問合せください。
また、本コラムはミニコラムとして、短い文章で事例をご紹介しております。もちろん守秘義務の関係で内容は改変しておりますが、お伝えしたいポイントはしっかりお伝えしております。
当事務所ではミニコラム以外にもコラムを発信しております。こちらでは出来るだけ詳しく介護福祉において重要なテーマについての分かりやすい解説、対策法、考え方、事例などをお伝えしています。以下よりお進み頂きぜひご確認ください。