労務トラブル対処事例

弊所の顧問弁護士としての対応ケースをご紹介します。顧問契約のご参考になれば幸いです(守秘義務の関係上、一部事案を改変しています)。

問題職員の理不尽な逆襲?突然弁護士を立ててきたら

ある地方の介護施設で常勤正職員を募集したところ、20代の介護福祉士の応募がありました。いい人であればそのまま採用したかったのですが、面接での受け答え等に不安があり、3か月間の有期契約として雇用しました。まずは一時的な契約とし、働きぶりを見て問題なければ改めて雇用したいと考えていました。

しかし、実際に仕事をしていただくと、あまりにも酷い勤務態度でした。言葉遣いが悪く、必要なケアをしない、ケアが乱暴であるといったクレームが相次ぎました。ご利用者やそのご家族からはもちろん、ともに働く現場スタッフからもクレームの嵐となったそうです。

直後に発生した数々の問題によって、「あの人が辞めないなら私が辞めます」といった声も出るようになり、施設長は3か月が経過する前に解雇することを決断しました。

ところが、解雇予告を言い渡した翌日からその問題ワーカーは出勤しなくなり、数日後に突然、代理人を名乗る弁護士から「不当解雇である」との書面が届きました。

ワーカーは、この施設に対して将来の賃金相当分であるとして700万円を、さらに「指導と称してパワハラを受けた分の慰謝料として、100万円を払え」と請求してきました。

この段階で、顧問契約をしている当事務所に相談メールが来ました。

顧問弁護士は、医療でいえば「かかりつけの医師」ですから、患者=クライアントのことはよく把握しています。自己紹介や事業形態の説明を抜きに、いきなり本題から入ることができるのです。

相談を受け、まず700万円という請求額は明らかに過大であると考えました。3か月間の有期契約である以上、本来支払うべき金額は当然マックスでも3か月分となるはずです。パワハラということも無いと思われますが、この点も関係者へのヒアリングで明らかにできるでしょう。

顧問弁護士は、顧問先様と強い信頼関係で結ばれているため、どのような相談や案件であってもお断りするということはまずありません。相手方に弁護士がついた以上、こちらも弁護士を立てる必要があるということで、直ちにお見積りを出し、依頼を得たのち代理人として相手方に受任通知を送りました。

弊所は介護福祉の分野に特化しており、類似のケースを多々扱ってきたため何を聞きどのような準備をすべきかを熟知しています。そしてできるだけ多忙な現場職員の方々の負担にならないよう、メールや電話を適宜併用します。本件でも、そのワーカーの問題点や解雇に至った経緯をユニットリーダーや上司のワーカー等からヒアリングしました。

ちなみに弊所の特徴をもう一つ書きますと、介護福祉の現場の方にとって「弁護士」はどうしても遠い存在であり、「こんなこと聞いてもいいのかな」と気後れしてしまうことも理解していますので、第一に現場の皆様に寄り添う心をもって、気軽に話しかけやすい雰囲気や声のトーン、言葉遣いに配慮しています(「そんなことは自分で調べれば分かるでしょう」といったことは間違っても言いません)。

その後当事務所としては、そもそもワーカーの主張には妥当性が無く、現場においてご利用者やその家族から出ているクレームが多数存在すること、パワハラなど認められないことをはっきり主張し、請求を拒否する旨の返答文を作成し、相手弁護士に送りました。

しかし相手方も簡単には引かず、「提訴すれば請求額は数倍になる」等とプレッシャーをかけてきます。ですが、常識的に考えてそのような法外な請求が通るはずがないことはもう過去に経験したケースから分かっていますので、動じることもありません。言葉は悪いですが、弁護士の交渉や訴訟は「プロレス」のようなところがあります。明らかな高額をブラフとして吹っ掛けることもありますが、最終的には妥当な結論に落ち着いていきます。しかし、そのような見通しを得られないと、最初の請求を真に受けて言い値を払ってしまうかもしれません。あるいは、どう対応していいか分からず右往左往するうちに、訴えられ長期化してしまうかもしれません。

当方も依頼者と協議した上で譲歩案としていくらかの解決金を示し、最終的にはその額を支払うことでワーカーが合意退職することで落ち着きました。

将来永続的に雇うか否か迷うような人員を雇用する場合は、「更新前提で有期契約をする」「一定期間の雇用を過ぎれば無期契約になる」といったことを安易に認めないことが大事です。事業所にとってみれば件の問題職員が自分を棚に上げパワハラを主張してくるのですから、まさに「踏んだり蹴ったり」の思いがすることでしょうが、世の中このようなこともざらにあります。十分お気を付けください。

このように当事務所は、顧問先様からご相談を受けたときは殆どの場合即座に返信し、問題点を見つけ出し、最善の対応方法を検討します。代理人として対応する前にはその対応方法を説明し、お見積りを事前に提示します。その後は、顧問弁護士が窓口となり依頼者にかわり対応のすべてを実行し解決に導きます。

介護・福祉に携わる事業所は事業を止めることができません。だからこそトラブル発生時に素早くスムーズに対策を講じ、実施できる体制が安心と時間・人件費のロス防止に繋がるといえるでしょう。

当サイトには顧問弁護士に関するご紹介ページもございます。顧問契約を真剣にご検討頂いている方には20分無料のオンライン面談もご提供しておりますので、お気軽にお問合せください。