退職勧奨は粘り強く、焦りは禁物

弊所の顧問弁護士としての対応ケースをご紹介します。顧問契約のご参考になれば幸いです(守秘義務の関係上、一部事案を改変しています)。

デイサービス事業所の責任者から次のようなご相談メールが届きました(個人情報や守秘義務に配慮し適宜編集しています)。

顧客先から送られてきたphexcelia@gmail.comの事例

いわゆる労働トラブルです。当事務所は、顧問弁護士としてあらゆる問題やご質問に対応していますが、人が全ての介護福祉事業において労働トラブルは大きな柱の一つといえます。稀に「対ご利用者のトラブルしか扱わないのではないか」と思う方もおられるようですが、対外・対内さらには対行政まで、360度対応しておりますのでご安心ください。

この職員はデイの送迎員として複数のご利用者様を施設へ送迎していましたが、上記のような問題があり、ご利用者や一緒に働く職員から、運転の仕方にとても不安があるという指摘が出ていたそうです。

この業界では、送迎員になる方はどうしても高齢の方が多く、自分の運転技術に絶対の自信をもっていたり、他者の意見を聴く耳を持たない人もいるようです。メールを読んで、現場管理者のご苦労が目に浮かぶようでした。

一般に、誰か職員に辞めてもらいたいと思ったとき、法的には「解雇」という方法がセオリーとなります。解雇の特徴は、利用契約の事業所側からの解除と同じく、相手に対する「一方的な通知」である点です。相手の同意が不要な点で絶対的な効力を有するといえますが、見方を変えれば「一度言い渡してしまえば後戻りできず、あとは相手からの提訴等の反撃を待つだけ」となってしまうという危うさがあります。

そして、広く周知の事実となりましたが、日本の労働法や裁判は労働者を手厚く保護するという傾向があります。どれだけ能力が低いと思われる職員であっても、相応の指導教育をした上で全く改善がみられないといった事情がなければ、正当な理由が認められず不当解雇であると認定されてしまいます。

これまで雇用主側として臨んできた数々の労働トラブルや裁判の経験から、本件もいざ訴訟になれば証拠集め等で苦労し結局はこちらに不利になるであろうことが予想されました。

そこで今回は、解雇ではなく飽くまで話し合いによる合意退職を目指す、「退職勧奨」を行うことをメールでご提案しました。

これを受け相談者の方は、当該職員と話し合いの場を設け、ご利用者側から多数指摘がある、職員からの報告もあがってきている、問題となる事実を一つ一つ問題職員に提示しながら、「人の命に関わる業務で何度も危険な状況を発生させることは看過できない」という考えをストレートに伝えました。言われた職員は初めて事態の深刻さに気付き、一方で自身の言い分も十分に伝え、結果として納得し契約満了となる前の段階で退職していただくことができたそうです。

先ほども述べましたが、法律は労働者を保護する傾向が強く、使用者側が解雇を言い渡したり、強く退職を迫ることはリスクを伴います。ですので、粘り強く退職勧奨を行い交渉する方が時には効果的な手段となります。

また、当事務所が心がけていることの一つに「迅速性」があります。悩みの大きさに関係なく、相談したい側としてはとにかくすぐ返答を得て安心したい、という心理があります。これは弁護士である自分も誰かに相談したいときの気持ちと同じですのでよく分かります。

当事務所は、顧問先様からのご相談は最優先で対応し、原則としてその日のうちにレスポンスするようにしています。今回のご相談の場合は、「何か事件が起きては手遅れになるから、とにかく早く退職してもらいたい」というご不安が強く表れていました。その思いに答えるべく、受信後ただちにメールで具体的な対応法や注意点を示し支援いたしました。

当サイトには顧問弁護士に関するご紹介ページもございます。顧問契約を真剣にご検討頂いている方には20分無料のオンライン面談もご提供しておりますので、お気軽にお問合せください。